東大寺正倉院に保存されているシカ革製品は1300年以上の歳月を重ねた今なお、その柔軟性や、色彩をほとんど失っていません。

< 正倉院紀要28号 原文抜粋 >

 

革は柔らかく、とても古代のものとは思えない程で、革の切り口は新しい革の様に見える程の新鮮さで、革の老化を感じさせない。

 

調査したすべての皮革素材について革種別に見ると、際立った特徴が見える。

 

それは、鹿革とそれ以外の皮革との柔軟性の差異である。

 

鹿革は千数百年を経た今日でも柔軟性を失っていない。

 

一方、鹿革以外はすべて硬くなっている。

 

鹿革だけが柔らかい。

 

この事実は強調しておく必要がある。

 

正倉院の宝物は千数百年の歳月を重ねているが、今日においても鹿革の柔軟性や、きちんと保管された革ではその色彩をほとんど失っていない。

 

これを実際に目にし手で触れたときは、まさに感動ものであった。

 

(参考文献:正倉院宝物特別調査報告 皮革製宝物材質調査 , 正倉院宝物に見る皮革の利用と技術 、正倉院紀要28号)